「年収の壁」は、大きく税金の壁と社会保険の壁に分かれます。令和8年度の税制改正(令和8年分以後に適用)で、本人に所得税がかかり始めるラインは給与収入178万円になりました。一方、家族の扶養控除や配偶者控除に入れる給与収入は136万円が目安です。社会保険では扶養の130万円が節目です。勤め先の社会保険の106万円は令和8年9月30日までの基準で、10月1日からは週の所定労働時間などの要件で判定します。数字が近いので混同しやすい部分を、順に分けて整理します。
税金の壁(本人にかかる所得税・住民税)
本人が働いて得た給与収入について、税金がかかり始めるラインです。
| 壁(給与収入) | 内容 | 根拠・適用年度 |
|---|---|---|
| 178万円 | 本人に所得税がかかり始める。給与所得控除74万円+基礎控除104万円で課税所得が0になる上限 | 令和8年度改正(令和8年分以後) |
| 119万円(東京23区など1級地・扶養なし単身) | 本人に住民税がかかり始める。非課税限度額の合計所得金額45万円+給与所得控除74万円。限度額は自治体の級地区分と扶養人数で決まる | 令和9年度分の住民税(令和8年分の所得)・東京都主税局/横浜市 |
基礎控除は合計所得金額で段階的に変わります。令和8年分・令和9年分は、合計所得金額489万円以下で104万円、489万円超655万円以下で67万円、655万円超2,350万円以下で62万円です(2,350万円超は改正なし。国税庁 令和8年度改正あらまし)。給与収入178万円は、給与所得控除74万円を引いた給与所得が104万円(合計所得金額489万円以下)にあたるため、基礎控除104万円と合わせて課税所得が0になります。令和7年分までは、給与所得控除65万円+基礎控除95万円で160万円がこのラインでした。住民税がかかり始めるラインは自治体ごとの非課税限度額で決まります。東京23区など1級地の扶養なし単身では、限度額が合計所得金額45万円で、令和8年分の給与収入にかかる令和9年度分の住民税では給与所得控除が74万円のため、給与収入119万円以下が非課税です(東京都主税局、横浜市Q&A Q5)。長く目安とされてきた100万円は給与所得控除55万円時代の数字で、令和7年分(令和8年度分の住民税)は110万円でした。住民税は前年の所得に課税されるため、控除引き上げの反映が所得税より1年遅れてラインが動いています。級地区分が下がる市町村や扶養がいる場合は限度額自体が変わるので、正確な金額は住所地の市区町村で確認してください。
扶養に関する壁(配偶者控除・扶養控除)
こちらは本人ではなく、配偶者や親などの税金を計算するときに、その人の扶養に入れるかどうかのラインです。所得税がかかり始める178万円とは別の基準です。金額は令和8年度改正(令和8年分以後)で引き上げられています。
| 区分 | 対象者の要件(令和8年分以後) | 根拠・適用年度 |
|---|---|---|
| 配偶者控除・扶養控除(一般) | 配偶者・扶養親族の合計所得金額62万円以下(給与収入のみなら136万円以下) | 令和8年度改正あらまし(令和8年分以後) |
| 配偶者特別控除 | 配偶者の合計所得金額62万円超133万円以下(給与収入のみなら136万円超207万円以下) | 令和8年度改正あらまし(令和8年分以後) |
| 特定親族特別控除 | 19歳以上23歳未満の親族の合計所得金額62万円超123万円以下(給与収入のみなら136万円超197万円以下)で最高63万円を控除 | 令和8年度改正あらまし(令和8年分以後) |
| 勤労学生控除 | 本人の合計所得金額89万円以下(給与収入のみなら163万円以下)など | 令和8年度改正あらまし(令和8年分以後) |
この「扶養に入れる給与収入」は、かつての103万円が令和7年分は123万円(合計所得58万円以下)、令和8年分以後は136万円(合計所得62万円以下)へと段階的に引き上げられました。19歳から22歳の親族については、136万円を超えても特定親族特別控除で段階的に控除が受けられます。
社会保険の壁(130万円と、10月1日に撤廃された106万円)
税金とは別に、社会保険(厚生年金・健康保険)でも節目があります。
106万円の壁は、短時間労働者が勤め先で社会保険に加入する要件のひとつ「所定内賃金が月額8.8万円以上」を年額にした通称です(8.8万円×12か月で約106万円)。令和8年9月30日までの要件は、週の所定労働時間20時間以上、月額8.8万円以上、2か月を超えて雇用される見込み、学生でないこと、勤め先の厚生年金の被保険者51人以上、の5つでした(厚生労働省)。
このうち月額8.8万円の賃金要件は、令和7年の年金制度改正法にもとづき、令和8年10月1日から適用されません。日本年金機構「短時間労働者の適用拡大」特設ページ(2026年9月16日更新・2026年9月26日確認)に「令和8年10月に撤廃」と明記されています。10月1日からは、週20時間以上・2か月を超える雇用見込み・学生でない・被保険者51人以上の4つで判定し、年収の額は要件に入りません。週の所定労働時間と月の所定労働日数が通常の労働者の4分の3以上なら、この4つによらず対象です。企業規模の要件は2027年10月から36人以上に引き下げたうえで、段階的に縮小・撤廃する方針です。週の所定労働時間から加入の要件を確かめるには年収の壁チェッカー、時給から手取りまで出すにはパートの手取り計算機が使えます。
130万円の壁は、配偶者などの扶養(第3号被保険者)に入っていられる年収の上限で、今回の賃金要件の撤廃では変わっていません。年収130万円以上になると、週20時間未満で働く場合でも扶養から外れ、自分で国民年金・国民健康保険などの保険料を負担します(厚生労働省)。年齢や障害の有無によって基準が異なる場合があります。
「103万円の壁」はどうなったか
かつての103万円は、給与所得控除55万円と基礎控除48万円を合わせた金額で、本人に所得税がかかり始めるラインでした。この数字は2段階で引き上げられています。令和7年度改正では給与所得控除の最低額が65万円、基礎控除が最大95万円になり、本人の所得税ラインは160万円、扶養に入れるラインは123万円になりました。続く令和8年度改正(令和8年12月1日施行・令和8年分以後に適用)で給与所得控除の最低額が74万円、基礎控除が最大104万円に引き上げられ、本人の所得税ラインは178万円、扶養に入れるラインは136万円になりました。現行制度では、本人に税金がかかり始める178万円と、家族の扶養に入れる136万円を分けて考える必要があります。
なお令和8年分については、11月までの毎月の源泉徴収は改正前のまま行われ、12月の年末調整で改正後の控除により1年分が精算されます(令和8年度改正あらまし)。各金額は2026年7月時点で確認した制度に基づく概算の目安です。実際の課税や社会保険の適用は、勤務先や自治体、個別の状況で異なります。